x(旧Twitter)ではちょこちょこ新刊本紹介などをしているが、なんとなくそれで書いた気になっている。ただ、しっかり書きたいときはやはりこのブログが必要だ。
さて、今日は「近世随筆翻刻書目データベース」なるものをリリースしたので、その紹介を。
データは、「閑山子LAB」の「電子書庫」から入手できる。
https://www2.lit.kyushu-u.ac.jp/~kawahira/#library
本データベース(以下DB)は、『日本随筆大成〔新装版〕』『未刊随筆百種〔新版〕』『随筆百花苑』などの随筆叢書に収録された、近世随筆の翻刻書目一覧である。対象とした随筆叢書は上記をはじめ29種、収録されている随筆書目はのべ1912点(2025年4月4日時点)。
このDBを作ったわけを簡単に述べる。
たとえば皆さんは、こんな経験をしたことがないだろうか。
「国書データベース」で、安藤為章『年山紀聞』を検索したところ、末尾に「〔活〕日本随筆全集六・日本随筆大成二期八・百家説林続編上」と書いてある。そこで、とりあえず最も見やすそうな『日本随筆大成』で見てみようと思って、書架にある『〔新装版〕日本随筆大成』を手に取ろうとすると、「国書」で表示されている第2期8巻には入っていない。新装版では第2期16巻に入っている。
あるいは、柳沢淇園『ひとりね』を検索したところ、末尾の活字翻刻情報のところに「燕石十種二」とあったので、手元の『〔新版〕燕石十種』(中央公論社刊)を見たところ、巻2には入っていない。新版では巻3に入っている。
さらに、中川三柳『醍醐随筆』を検索したところ、末尾の活字翻刻情報のところには「〔活〕杏林叢書三・百万塔」とある。しかし、手元にある『続日本随筆大成』第10巻の情報は記されていないから、それに気づかず、「百万塔」の誤植だらけの古い翻刻を利用してしまった。
こうした齟齬の原因は、「国書データベース」の複製・活字情報が、その前身となった「国書総目録」の段階から、基本的にはアップデートされていないからである。つまり、昭和50年ごろ以降に修訂・再刊された随筆叢書類(上でいえば『〔新装版〕日本随筆大成』『〔新版〕燕石十種』など)、あるいはそれ以降に新たに編集・発刊された随筆叢書類(上でいえば『続日本随筆大成』など)の情報は、基本的に反映されていないのだ。
これは「随筆」だけに限った話ではなく、すべてのジャンルに共通する問題なのだが、とりあえず「随筆」については、今回作ったDBによって、そのストレスを少しでも軽減できるのではないかと思う。
また、Excelで提供しているので、データをいろいろな見地から並べ直しみると、なんらかの新知見が得られるかもしれない。
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